【column】空家問題 人口減少社会の新たな火種に
 Byハウジングトリビューン/2006.22

人口減少社会のなかで、新たな社会問題としてクローズアップされつつある空家問題。
一般的に、地域内に空家が増えてくると、治安などが低下し、地域価値を低下させると言われている。
住宅産業界としては、こうした空家問題に対して、どのような対応策を図っていくべきなのだろうか。
一方では空家や空地の増加をビジネスチャンスに結びつけている例もあるだけに、見逃せない問題になってきているのは間違いない。

地方圏だけでも300万戸以上の空家が発生

 国土交通省が総務省の「住宅・土地統計調査」をもとに推計した結果によると、首都圏・地方圏を問わず空き家の数が一貫して増加する傾向にある。

  とくに地方圏においては、03年時点で約326万戸もの空き家が発生している。また、東京圏においても、03年時点で約165万戸が空き家となっており、“住宅あまり時代”が既に到来している様子をうかがい知ることができる。

  こうしたなかで国土審議会土地政策分科会企画部会の下に設置された低・未利用地対策検討小委員会では、今年7月に検討結果についての中間取りまとめを発表するなど、今後の具体的な対策に向けての検討が進みつつある。

  そもそも空き家の増加によって、どのような問題が起きるのだろうか。ひとつには治安の低下を招く恐れがあることが挙げられる。

  千葉県八千代市の調査によると、過去10年間の火災発生は、空き地に絡むものが多く、そのうち放火によるものと考えられるケースが半数もあったという。

  この調査は、空き地を対象にしたものだが、空き家の場合であっても同じような事態が想定できるだろう。

  また、空き家・空き地で不法投棄が行なわれるという場面を目にすることも多い。さらに言えば、管理が滞った空き家が地域内にあると、街全体の経済的な価値を低下させてしまうこともある。
欧米などでは、隣に空き家があるために、自宅を売ろうと思っても買い手が見つからないというケースもあるようだ。そうなってくると、ストックマーケットの拡大を阻害する要因にもなりかねない。

空家をUJIターンやニ地域居住の受け皿に

 空き家問題が深刻化するなかで、一方で空き家を有効活用し、UJIターンやニ地域居住の受け皿にしようという取り組みが注目を集めている。

団塊の世代が退職期を迎える2007年に向けて、UJIターンやニ地域居住による新たなマーケットに期待が寄せられるなかで、空き家が再び有効活用されるチャンスが広がってきているのだ。

国土交通省でも、来年度に向けた施策としてUJIターンを支援するだけでなく、ニ地域居住を促す仕組みづくりを検討している方針を明らかにしている。

具体的には、「ニ地域居住を一部の限られた人のものだけにするのではなく、広く一般化していくための取り組みを進めていく」(都市・地域整備局地方整備課)として、都市住民に対する情報提供などを進めていこうとしている。

 一部の旅行会社などでは、地方の空き家となって民家を対象として、会員制別荘型のサービスを実施しているが、こうしたサービスの情報を提供していくだけでなく、実験的に会員を対象とした認証制度を創設し、認証をしたものについては交通費を割り引くシステムなどを構築していく予定だ。これによって、ニ地域居住を一般化するうえで、大きなネックとなる移動費を削減していこうというわけだ。

 ふるさと情報館を展開するラーバンでは、90年から地方の空き家に関する情報を田舎暮らしやセカンドハウスの購入を希望する人への紹介を実施している。

 同社では、田舎暮らしなどを行いたい人の会員組織を創設しており、会員に田舎暮らしを実現する情報誌として「ふるさとネットワーク」という月刊誌を発行している。この月刊誌には、田舎暮らしを実践している人の体験談や、田舎暮らしを行なう上で留意する点などとともに、田園地域やリゾート地の空き家物件情報を紹介している。

 また、八ヶ岳に直営事務所を設置しているほか、地元の不動産などと提携する形で地域店や提携店のネットワークも構築している。こうした不動産ネットワークを通じて、空き家情報を入手し、会員に提供しているのだ。

 同社の相原誠専務取締役によると、「田舎暮らしについては、地域に馴染むことができずに、せっかく買った家を手放す人も少なくありません。当社では、できるだけ会員の方が楽しい田舎暮らしを過ごせるために、月刊誌などを使って田舎暮らしを成功させるための秘訣などを紹介しているのです。また、購入希望者の方のニーズを聞きながら田舎がいいのか、それともリゾート色が強い場所がいいのかといった提案をしていますし、移住後は地域店や提携店などが様々な相談にのるようにしています」としており、単なる不動産仲介業務だけでは田舎暮らしを成功させることはできないという。

 現在、同社を通じて空き家を購入する人の60〜65%くらいが定住を希望し、残りがセカンドハウスとして購入しているという。また、「2、3年前からリタイア期の住まいとして空き家を購入する人が増えてきています」という。

 様々な社会問題の火種となり得る空き家だが、見方を変えればまだまだ活用できる住宅ストックだとも言える。

 増加する空き家をストックとして捉え、どのような生活を提案していくのか―。空き家問題の裏側にはビジネスチャンスも隠れていそうだ。