出典:新建まちづくり新聞08/11/20
  飲食店の建築コスト・CO2削減策
坪7万円安い木造に切り替え進む
   
  「今年の夏から飲食店やファストフード、コンビニのチェーン・フランチャイズの引き合いが急増した」とある木造建築グループ。どうやら小規模店舗の建築発注が独占状態だった鉄骨造から木造に切り替わりつつあるようだ。なぜか?飲食店を例にデータと現場を追ってみた。
  「鉄骨造」のシェアは65%から54%に縮小
最近6年間の飲食店建築動向をみると特徴的なことがみてとれる。圧倒的なシェアをもっていた鉄骨造が年ごとに減り、木造店舗が徐々に増えていることだ。
国土交通省の建築着工統計調査によると飲食店は年4千〜5千棟ペースで建築。構造は6年前の平成14年度まで65%(3棟に2棟)を占めた鉄骨造が翌15年度に62%、以降少しずつシェアを減らし、19年度は54%まで落ち込んでいる。これに対して木造は14年度がシェア27%で4件に1件の割合だった。しかし、16年度に31%にのせ、19年度は32%。3件に1件は木造となっている。
飲食店が木造を選ぶ理由はなにか。あるチェーン店の設計者は「決め手はなんといってもコストと意匠。ただ、店舗のコンセプトを立てていくときに従来はオーナーの掛け声にとどまっていたCO2削減とか、自然・環境志向が店舗開発の現場までおりてきて、『木の質感が好き』『エコロジカルな材料』を求めだした」という。

価格差広がる鉄骨造と木造

まず、鉄骨造と木造のコスト比較から見ると、19年度の建築着工統計では、鉄骨造が1平方メートル(以下・u)あたり17万円(1坪あたり57万円)、木造がu15万円(坪50万円)。鉄骨造に比べて木造は坪7万円安い。
同統計によると、17年度までu15万円(坪50万円)前後だった鉄骨造は18年度から値上がりを始め、同年にu16.8万円(坪55万円)。鋼材の値上がりが顕著となった19年度からはさらに坪57万円まで高騰。世界金融危機で現在は鋼材価格が下落しているとはいえ、今年上半期もu18.5万円(坪61万円)に上昇している。
一方の木造建築は14年度にu15万円(坪50万円)だった建築費が以降は横ばいか値下がりし、鉄骨造が値上がりした18年度にu14.65万円(坪48万円)、19年度はu15万円(坪50万円)。今年上半期も横ばいが続いている。
1店舗あたりの飲食店平均面積は35〜70坪。仮に35坪で単純計算しても鉄骨に比べ坪7万円安い木造は245万円安くなる計算だ。木造建築が増える要因となっている。
 
 
引き合い急増木質ラーメン構法木造建築の
坪1万円増大開口・大空間を実現

飲食店はじめ店舗建築には広い開口部と大空間の室内、設計の自由度が欠かせない。その条件を満たす建築構造はこれまで鉄骨造が中心で、それが圧倒的シェアを占める要因となっていた。
ところが、ここにきて木造の技術開発が進み、木造であっても耐力壁の制約を受けずに大きな開口部や大空間ができるようになった。
その新しい技術のひとつが木質ラーメン構法。門型やロ型に配置した柱と梁のフレームで構成し耐力壁を要しない構造だ。
住宅・店舗の新築・リフォーム向け門型フレームを供給するカスタムハウジング梶i本社・大阪市)。植岡豊博社長は「建物入口は開口を最大8〜10m飛ばし、また奥行きはフレーム重ねることでフラットな空間が自由自在にできる。これまで狭小間口など市街地店舗や店舗併用住宅、3階建て建築は構造上の制約から鉄骨造にせざるを得なかったが、ラーメン構法により木造建築でも可能になった。都市部でも木のぬくもりある木造建築のニーズは高い。大空間設計ができてしかも価格が安いのであれば鉄骨造に十分対抗できる競争力をもつ」と話す。
同社のフレームは、構造計算を含んで坪あたり1万円程度のアップとなる。30坪の店舗なら一般的な木造軸組工法に比べ30万円余計にかかる計算だが、それでも鉄骨造に比べては坪10万円安くなる。
このため、「今年の夏からとくに飲食店・コンビニ・ファストフード店の店舗開発者からの引き合いが急増している」(高橋英介企画開発課長)という。
   
  とくに最近はコストや設計自由度という強みばかりでなく、地場のスギ・ヒノキ・マツ材などの小径木材・間伐材を用いた木質ラーメン構法の開発も進む。
そのひとつJ・pod工法を開発した有限責任事業組合J・podエンジニアリング(大阪市)の樫原健一氏(建築家)は『CO2削減・森林荒廃の両方を解決するため間伐材を用いた木造ユニット構法を開発。特殊な技術や機械設備を必要とせずユニットが連結でき、高層化も可能なので住宅から店舗まで用途は広い』と話す。
実際、奈良県などの商店街・京町家から引き合いがある。木質ラーメン構法を調査した秋田県立大学木材高度加工研究所の川鍋亜衣子准教授によると、『木質ラーメン構法の研究開発は90年代から。実用化が進んだのはここ数年のこと。
現在、木質ラーメン構法はその種類だけで23種類にも及ぶ。木造技術は日進月歩。比較検討しながら自社にあった構法を選ぶ時代に入った』と指摘する。